【理学療法士監修】スマホ首が引き起こす自律神経の乱れとは

〜首こり・頭痛・倦怠感の背景にある「現代姿勢」〜
近年、「首が重い」「頭痛が続く」「寝ても疲れが取れない」といった不調を訴える方が増えています。
その多くに共通して見られるのが、スマートフォンやパソコンの長時間使用による姿勢の崩れです。
このような状態は一般的に「スマホ首(ストレートネック)」と呼ばれ、
筋肉・神経・循環のバランスを長期的に乱すことが知られています。
■ スマホ首と自律神経の関係
人の頭部はおよそ5〜6kgあり、前方へわずかに傾くことで首にかかる負荷は2倍以上に増加します(Hansraj 2014)。
この持続的な負担は、首の深層筋の過緊張と血流の低下を招き、
体を常に“緊張モード”へと傾けてしまいます。
この緊張が続くと、交感神経の活動が優位な状態になり、
眠りが浅くなったり、呼吸が浅くなったりといった変化が現れます。
これが「首こり」と「自律神経の乱れ」が同時に起こる理由の一つです(Kim 2021)。
■ 体に起こる変化
- 首から肩にかけての慢性的な張り
- 頭の重さ・目の奥のだるさ
- 集中力の低下や睡眠の質の低下
- 疲労が抜けにくく、朝から重い感覚
これらは単なる「筋肉のこり」ではなく、
首まわりの神経や血流、そして呼吸パターンの変化が関与していると考えられます(Lehrer 2020)。
■ 専門的な視点からのアプローチ
当院では、首そのものを強く刺激するのではなく、
全身の連動性と神経系のバランスを整えるという考え方で施術を行っています。
姿勢や動作の一つひとつを細かく観察し、
首に負担がかかる要因を探りながら、
その人の体が持つ“自然な回復力”を引き出していきます。
ボキボキと音を鳴らすような刺激ではなく、
呼吸や筋肉の緊張を整える「静の施術」。
それが結果的に、頭の重さや首の張りを和らげる近道となります。
■ 治療ではなく「再構築」
一時的な痛みの解消ではなく、
姿勢・呼吸・神経の調和を取り戻すことで、
体全体の安定感を再構築していくことを目的としています。
そのプロセスの中で、
「首の軽さ」「頭のクリアさ」「呼吸の深さ」
といった感覚が自然と戻っていくことを、多くの方が実感されています。
■ まとめ
- スマホ首は、筋肉だけでなく自律神経にも影響を及ぼす
- 首の負担は、全身の姿勢や呼吸のバランスと密接に関係する
- 強い刺激よりも、身体が本来持つ調整機能を引き出すことが大切
■ 参考文献
Hansraj KK. Surgical Technology International, 2014.
Kim JH et al. Frontiers in Psychology, 2021.
Lehrer PM et al. Applied Psychophysiology and Biofeedback, 2020.
Gross AR et al. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2015.
Park S et al. Journal of Clinical Sleep Medicine, 2022.



